特許文献は宝の山

特許をバリバリ読んだことのある起業家の方はそう多くないと思うのですが、実は特許文献って宝の山なのです。
これはスタートアップに限った話ではありませんが、特許にあまりなじみの無い方々の中には、「特許って『スゴい発明』をしないと取れないんでしょ?」といったような、特許を何か高尚なもののように理解している方が一定数いらっしゃいます。でも全然そんなことはありません。特許を取ること自体はそんなに難しくありません(ちゃんと事業にマッチした形で特許を取るのはやや難しいですが…)。聞くところによると近年、日本特許庁における特許査定率は75%くらいらしいので、ものすごい単純化すると「4件の特許を出願すればうち3件は登録になる」と言うことができます。 弊所のクライアントでも、「こんなの特許になるのかな…」と半信半疑で出願をして、登録になっても「これ本当に特許になったんですか?」と特許取れたことが信じられないような方が時々いらっしゃいます。でも実際にそういう(その業界の方からすると一見当たり前のような技術の)特許が取れてしまうことがあるわけで、このあたり理解されている大企業とか、一部の野心的なスタートアップとか、チャレンジングな特許出願をしているところも少なくありません。 そんなわけで世の中にはいろんなレベルの特許出願があり、そしてそれは(出願から1年半というタイムラグがありますが)公開されます。特許になるかならないかのギリギリのところを狙ったものから、高度に技術的に完成されたものまで、様々なアイデアが無料で(!)公開されています。ちょっと大げさですが特許文献は人類の英知の結晶ということもできます。その昔ソビエトには、世界中の膨大な特許文献を分析してアイデア発想法を体系化した人もいました。 様々な人の様々なアイデアが公開されているわけですので、これを活用しない手はありません。皆さんの事業アイデアに関連しそうな特許を検索してみると、おそらく想像以上に多くの特許文献がヒットすると思います。それらの文献には、皆さんが着目していなかった技術課題や、その解決手段が示唆されているかもしれません。特許法的には、公開された技術は人類の共有資産であり、(特許権が存続していなければ)自由に使うことができます。これらの文献から、皆さんの事業に使えそうなアイデアを拝借するもよし、文献に記載された課題や解決手段をヒントにさらなる発展的なアイデアを発想するもよし、特許文献には大きな可能性が眠っています。 個人的には、是非、新しいアイデアを発想する際のヒントとして特許文献を活用していただきたいと思います。一つのお薦めは、事業に関連する複数の文献を課題に注目して見ていくことです。ある技術分野についてある程度まとまった数の文献を見ていくと、どうやら世の中の多くの人は○○したがっているらしいとか、△△に困っているらしいとかいうニーズが見えてきます。そのニーズにどう応えるか?そうやって考えてみると、新しいビジネスアイデアが生まれるかもしれません。

渡邉 浩

パートナー・弁理士。世界を変える仕事の片棒を担ぐのが夢。